もう30年以上前のことだが、黒テントのあれはなんだったか、佐藤信の『阿部定の犬』だったか、その芝居の最後のセリフは斎藤晴彦の「そうか、昭和、終わったか」だった。その芝居から10年少し、ほんとうに昭和が終わってしまったとき、いちばんに思い起こされたのが、その斎藤晴彦のセリフだった。 昭和天皇が崩御したのはちょうど20年前の1月7日。つまり昭和が終わって、まるまる20年経ったのだが、その当の1/7に、「昭和が終わって20年」なんて、ほとんど聞かなかった。もっともテレビつけてないからかもしれないのだが、いやもう少しなんだかんだあってもよさそうなのに、そんなに「昭和」はもうあっちに置いときたいのだろうか。 《昭和が終わって20年.....すでに昭和はセピアの彼方なのか》と『昭和』とタイトルした写真展もきょうで終わり。昭和はわら半紙の向こうにひらひらと舞っているのかもしれない。 そういえば、きょう1/11は「昭和の絵師」と言われるようになった上村一夫の命日とか。どんどん昭和はあっちへ行く。
震災 永井荷風今の世のわかき人々われにな問ひそ今の世とまた来る時代の芸術を。われは明治の児ならずや。その文化歴史となりて葬られし時わが青春の夢もまた消えにけり。團菊はしをれて楼痴は散りにき。一葉は落ちて紅葉は枯れ緑雨の声も亦絶えたりき。圓朝も去れり紫蝶も去れり。わが感激の泉とくに枯れたり。われは明治の児なりけり。或年大地俄にゆらめき火は都を焼きぬ。柳村先生既になく鴎外漁史も亦姿をかくしぬ。江戸文化の名残煙となりぬ。明治の文化また灰となりぬ。今の世のわかき人々我にな語りそ今の世とまた来む時代の芸術を。くもりし眼鏡をふくとてもわれ今何をか見得べき。われは明治の児ならずや。去りし明治の世の児ならずや。
今の世のわかき人々われにな問ひそ今の世とまた来る時代の芸術を。われは明治の児ならずや。その文化歴史となりて葬られし時わが青春の夢もまた消えにけり。團菊はしをれて楼痴は散りにき。一葉は落ちて紅葉は枯れ緑雨の声も亦絶えたりき。圓朝も去れり紫蝶も去れり。わが感激の泉とくに枯れたり。われは明治の児なりけり。或年大地俄にゆらめき火は都を焼きぬ。柳村先生既になく鴎外漁史も亦姿をかくしぬ。江戸文化の名残煙となりぬ。明治の文化また灰となりぬ。今の世のわかき人々我にな語りそ今の世とまた来む時代の芸術を。くもりし眼鏡をふくとてもわれ今何をか見得べき。われは明治の児ならずや。去りし明治の世の児ならずや。