天神祭といっても、一頃のようにシャンシャーンってやってるわけにもいかず、花火も見ることもなく、ふっと浴衣姿のおねえさんを撮るくらい。あくせくあくせく
ヘタすりゃ火曜サスペンスに陥ってしまうのを、ふみとどまっているのは、大竹しのぶ、永瀬正敏、室田日出男の3人。役者がいいと締まるもんだ。ラストでの大竹しのぶはギョッとするくらい美しい。それまでの2時間はあの絵のためにあったような気がする。
つげの『貧困旅行記』の「蒸発旅日記」から、かなり原作に忠実。が、これはつげじゃないですよ。なんか別のもの。直前に観た『死んでもいい』は役者がよかったのに、芯になる役者が絶無。ふつうさ、メインが弱かったら、なんとかサイドでもたせるのに、サイドの面子もからっきし。なんかさぁ、やたら妙ちきりんな記号が目立ち過ぎ。時計はすべて裏だし、あんなに時計を見せる必要なんてないしね。こういう映画って、つげの愛読者がおおかたを占めるのにねぇ、「睡眠薬」などと太ゴチックで書かれた薬袋を映し出すなんてずっこける。それに木村威夫の美術がますますつげ離れしてしまう。それはそれなりにいいのだけど、例えばカフェ・カリガリの装置はさすがに木村威夫なのだが、そこに配されたテーブルがどうにもいけない。そうしたディティールまで手が届かない低予算がみえみえ。それなら木村威夫でなくて、その分を別のところにもってけばいいのに。山田勇男って監督はどうも木村威夫組らしい。 実はこれ、2年ほど前に見かけて、途中でほり出したの。そしてきのうの晩に見かけて、また途中でほりだした、ようやっと続きを最後まで我慢したのは、ここのところ、『リアリズムの宿』、『無能の人』、『ねじ式』と見てきたから、その成り行きだけ。